エルドラドステージ
光のカーテンを抜けて彼の姿をとらえた時だった。


彼の根元で、登が歌っている。


騒々しい木たちに囲まれて歌う彼の周りは、まるで時間が止まっているかのようだった。



章と武は足を止め、ひとつ深く呼吸をしてから彼の時間の中に入っていった。



「俺たちの夢が終わる。それを見届けに来た。」



武は時間の番人に告げた。


「俺にはわからない…」


そう言うと登は再び弦を爪弾いた。

登の奏でる音楽が神々しく森に響く。



「今はただ…祈りを―」



章は胸に手を添え、跪づいて瞳を閉じた。


木が、風が、光が、においが、アルカディアの幸福すべてが賛美歌になる。


時間は優しく彼の最期を包んでいた。



しかしやがて三人は死の冷たさを知ることとなる。


彼が受け付けなくなって溢れ出ていた養分は、適度な湿気と暖かさの中で別の生物を産み育て、彼を蝕んでいた。



アルカディアが起源となる生物は、時に悪魔のような生命力をみせつける。

老いた彼は当然、その攻撃性の餌食となっていた。


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