エルドラドステージ
目を覚ますと、見慣れた世界がそこにあった。

剥がれかかったアスファルト、崩れたビル、砂漠、すべてがくすんで見える。


章は横に寝ているはずの登がいないのに気づき、辺りを見回した。

武は少し離れたところで寝息をたてている。


月が綺麗だった。
ビルの壁に背もたれて登は歌っていた。彼はこんな夜には歌わずにはいられないらしい。


「…怖い夢でも見たのか?」

登はマンドリンの手を止めて章のそばに腰を下ろした。

「未来の…夢を見たんだ」

「俺たち、幸せだったか?」

登は章の頬に手を伸ばした。

「きっと…エルドラドはある」

登は章に口づけると背中に手を回し、優しく抱きしめた。

登から寂しさが伝わる。
―俺がいるのに―!!
章はどんなに登と抱き合っても、彼の寂しさがわからない。

どんなに愛しても武が守っても、登はいつも寂しく戦う。
まるでたった独りで旅しているかのように。
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