愛のカタチ
「ごめんね、遠回りなのに」
見上げた賢司は、首を横に振った。
「でも、ほんとに途中まででいいからね!」
念を押すと、ふぅ〜っと一息ついた賢司は、呆れたように口を開いた。
「さっきから言ってるだろう?俺が送って行きたいんだから気にするなよ!
それに、こんな真夜中に女一人で歩かせられると思うか?」
「でも……」
駅前に続く大通りに出れば、いくらでもタクシーが拾える。
ここからならワンメーターの距離だ。
それなのに、タクシーから遠ざかるように、高校の裏手に広がる静かな住宅街へと、足は向かっていた。
実家は、高校から自転車で15分位の高台にあった。
賢司の家は、最寄り駅から東へ二駅離れた隣町の中心部にあった。
まさか……歩いて帰るつもり?