愛のカタチ
「何かあったらいつでも連絡して来いよ!」



耳から入る賢司の声が、静かに深く身体の中に染み込んでいく。



髪にそっとキスを落とした賢司は、ゆっくりと身体を引き離した。



見上げた賢司は、優しさと慈愛に満ちた表情でこちらを見つめていた。



そんな賢司を前にして、溢れ出そうになるものを必死で堪え、片時も目を逸らすことができなかった。 



黙ったままの賢司は、ただ笑みを浮かべたままだった。



「そろそろ帰ろうか…」
ようやく発せられた言葉で、家路へと促された。




一度だけ頷いた私は、彼の一歩後ろを歩き、彼の背中を目に焼き付けた。




清々しい朝の空気をたっぷり吸い込みながら、実家へと向かう道のりは、なんだかとても不思議な感覚だった。










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