愛のカタチ
家の中は、しんと静まり返っていた。



玄関に入ってすぐ左側にある下駄箱の上の置時計だけが、カチコチ…カチコチ…正確なリズムを刻んでいた。



まだ、両親とも寝ているようだった。



諒とともに、パンプスを脱いで、玄関の上がり口にあるライトに手を伸ばしたときだった。 




「あら、二人とも一緒だったの?」



パジャマ姿の母親が、奥の和室からやってきた。



「起きてたの?」



「今、目が覚めたところ。鍵をガチャガチャさせる音がしたから」



「ごめん、起こしちゃったね」



「ちょうど起きようと思ってたところよ。こう暑くちゃ、ゆっくり寝てられないわ!同窓会は楽しめた?」


「う、うん、まぁね…」



スリッパからサンダルに履き替えた母は、話しながら玄関の扉を開け、朝刊を取りに行った。





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