愛のカタチ
掌で上手に転がす……か。
私は拓也のことを、上手に転がせているのかな?
確かに、飲んだくれの拓也には腹が立つけど、かといって、拓也が浮気しているわけでもないし、給料を入れないわけでもない。
この若さで分譲マンションを手にしている私は、世間一般から見れば、恵まれた方なのかな?
でもな……。
なんか、心が満たされないんだよね。
「夫婦って、なんだろうね?」
「何なの?急に……。
そうねぇ、夫婦って船かもしれないわね」
「船!?」
「そう。二人で漕いでいくもの。一人が漕がないでいると、なかなか前に進めないでしょ?
でも、二人で力を合わせたら、どんな荒波だって越えられる!
長い夫婦生活の中には、いろいろあるわよ。
子供が小さいうちは、病気をしないか気になるし、大きくなると勉強の方もね。
そうなると、今度は塾代や進学費用のお金の工面だったり、住宅ローンもあるしね。
でも、お母さんは幸せよ!優しいお父さんと可愛い子供たちに囲まれているんだもの。お陰でこんなに太っちゃったけどね」
目の前で、にこやかに笑う母が眩しかった。
湯飲みを引き寄せ、両手で口元に運ぶと、温かいお茶とともに母の言葉が体中に染み渡り、心が癒されるようだった。