愛のカタチ
結婚してから30年近くにもなるというのに、母は、朝晩の出迎えを欠かさない。
娘ながら、そんな母を感心してしまう。
私なんて、洗い物をしていたり、手が離せないときはリビングから拓也を送り出してしまうのに……。
「おっ!珍しい人が来てるな」
「お帰りー!お疲れさま。
最近、仕事忙しいの?」
「まあ、いろいろとな。9月で決算期だし、書類もたくさん溜まっててな。
拓也くんも忙しいんじゃないか?しばらく会っていないけど、元気にしてるか?」
「うん、元気だよ!
先週は、セリーグの優勝決定の仕事が入ってて大変だったみたいだけど」
「そうだろうな。どこの業界も、今はみんな苦しいからな。余力があれば別だけど、広告費を削る企業も増えてきているし、新たに新規の仕事を採るのも大変だろうな」
ネクタイを緩めながら、父が話す。
「うん、そうみたいだね」
父と同じようなことを拓也も話していた。
不景気が続いている以上、会社の中で削れる経費といったら、やはり一番は広告宣伝費になるだろう、と。