愛のカタチ

一通り話した父は、リビングの隣にある和室で、背広を脱ぎ、着替えを済ませた。 


席に着くと、母が冷蔵庫から取り出した冷えたビールに手を伸ばし、グラスに注ぎ始めた。



二層に分かれたビールは、肌理の細かそうな泡が立った。


「んー、旨いっ!」


満足気な顔で、父はグラスのビールを飲み干した。



その間、さっきのが嘘のように甲斐甲斐しく、料理を運ぶ母。 


たちまち色とりどりの小鉢が、所狭しとテーブルに並べられた。 


さらに、氷の入ったデキャンタに日本酒を入れ、お猪口を父の前に置いた。



一杯目は、必ず、母がお酌し、その後は自分のペースで飲むのが父流。 



結婚以来、ずっと続いている習慣だ。 



そんな二人のやり取りを、微笑ましく眺めていた。




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