愛のカタチ
「おっ!不良妻、来てたのか!」
帽子を目深に被った諒が、目の前に立っていて驚いた。
「ビックリするじゃない!それにしても、珍しいね。こんな時間に帰ってくるなんて……この不良息子が!」
諒に負けじと反撃した。
「バーカ!俺だって、早く帰ってくる日があるんだよ!」
「バカは余計だよ!……まったく!ちょっとは年上を敬いなさいよね」
ジーパンの後ろポケットからはみ出たキーホルダーや鍵をガチャガチャさせた諒が、思い出したように口を開いた。
「――あっ!そういえばさ。この前、賢司先輩に駅前で会ったよ」
「…えっ?……賢司に?」
「あぁ。姉貴によろしくって、言ってたよ!
賢司先輩、相変わらず格好良かったよ。あの人、昔から硬派で隙がない男だよな」
「ふーん」
気のない返事をしたが、内心、心臓がバクバク音を立てていた。
思ってもみない人の名前が諒の口から出たものだから、平常心ではいられなかった。