愛のカタチ

ダッシュボードに手を伸ばし、車検証や車の保険証書などがはいった冊子の隅に置かれた、小さな布袋を取り出した。 



袋の紐を解き、逆さまにひっくり返して、左手に載せた。 


小さくて可愛らしくて……   


見ているだけで心が落ち着いた。



あの日――… 


賢司が落としたストラップ。


外れた金具もすべて、この中に収まっている。


サッカーボールを巧みに操り、こちらに涼しい笑顔を向けた賢司の顔が浮かんでくる。 
 

ダッシュをして、木場くんに一位をもぎ取られたときの悔しそうな表情も…… 


帰り道、二人で並んで話した公園での抱擁も……


思い出すだけで、身体の芯が熱くなって、胸を焦がすような思いが込み上げてくる。 



でも、このままでは――…。 




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