愛のカタチ

プップップップッ……という、機械音が鳴るなり、すぐさま電話を切った。


ダメだ……やっぱりかけられない。


電話が繋がったところで、何を話せばいいのだろう。


勢いで、通話ボタンを押してしまったけれど、自分でも何をしたいのか分からなかった。　



ただ……　

ただ、彼の声を……

賢司の声を聴きたかっただけだから……。　



一時的な気の迷いで、今ある、私の置かれた生活基盤を崩すわけにはいかない。


賢司は、私にとって、淡い青春時代の憧れの人なのだから、今さら何をしたって……。


私には、そんな強い気持ちは持ち合わせていない、はず。


自分の中のもう一人の自分が、静かに囁く。







――と、突然、七色の光を放ちながら、携帯電話が鳴り出した。


ディスプレイに表示された名前に息を呑んだ。