愛のカタチ

どれくらい話しただろう。


携帯の充電が切れそうになり、「またね」と電話を切った。 


ディスプレイに表示された通話時間が【1時間45分23秒】とあった。



空白の時間を埋めるように、話が弾み、長年、伝えることのできなかった想いも伝えることができた。


心の霧が晴れ、過ぎ去りし日々がキラキラ輝いたような気がした。



お互い、この10年、違う道を歩んできたけれど、ほんの数時間の“幸せな時”を過ごすことができた。


今は、賢司と出会えたことで、前を向いて歩いていけるような気がした。



時間が経つのも忘れるほど、二人の会話は楽しかった。


車を降りると、外は冷たい風が吹いていた。 


半袖では身震いするほどで、荷物を片手に、早足でエントランスへと向かった。 


久しぶりに聴いた賢司の声に、身体中を熱い血が巡るようだった。 



ただ言葉を交わしただけなのに、賢司から不思議なパワーを貰ったような気さえした。




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