愛のカタチ


そんな矢先のことだった――。 


水川きよしのコンサートが都内で開かれるからと、義父母が遥々四国からやってきた。 



お盆に帰省したときも、義父母を始め、親戚からは、孫の顔を見ることを心待ちにしている様子がひしひしと感じられた。



時々、かけてくる電話でも、遠回しに催促しているのが伝わる。



婉曲な物言いの端々に含まれる刺(とげ)を感じずにはいられなかった。 



田舎では、結婚してすぐに子供を作るのが嫁の務めとされている。



『子供を作る』という考え方自体、私は納得できないのだけれど。 



田舎特有の跡継ぎの問題は、今もなお、拓也の地域には根強く残っていた。




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