愛のカタチ

自宅で茶道の師範をしている義母は、お弟子さんを多数抱え、市役所が主催する市民講座の講師としても活躍している。



そのためか、話題も豊富で、常に若いお弟子さんに接しているからか、気持ちも若い。 



その年代の女性にしては珍しく、体のラインも崩れておらず、今日身に付けている焦げ茶色のスーツも彼女によく似合っている。



何よりピンと伸びた背筋が、実年齢より若く見せる要因だろう。 



「拓也の同級生の誠くんのところは、先月、双子の赤ちゃんが産まれたわ。それから、隆くんのところなんて二人目。みんな立派なお父さんをしているわ……」



近所に住む拓也の同級生の話を持ち出して、遠回しに私に催促しているのだろう。 



「あんまりプレッシャーになることは、言わないでくれる?今は、二人だけの生活を楽しんでいるんだから。時期がくれば、授かるよ、きっと!」



「そうだよ、母さん。拓也の言う通りだ。そういうのは自然に任せておこう」



苦虫を噛み潰したような義母は、黙りこくった。




< 231 / 304 >

この作品をシェア

pagetop