愛のカタチ
自分の親でさえ、子供について触れることはないのに……。
こうして、改めて催促されると、自然と反発心が生まれてくる。
夫婦のプライベートにまで口出ししないでもらいたい。
でも、思わぬ助け船に救われたような気がした。
これで、寄ってたかって、みんなで責めようものなら……。
「新しい紅茶、淹れますね」と、席を立ったときに、ちらりと時計に目をやると、三時を過ぎていた。
コンサートは、新宿のマコ劇場で五時からだった。
「どうぞ」
温かい紅茶を勧めたが、義母はほとんど口もつけずに、そそくさとマンションをあとにした。
義父が申し訳なさそうに、「真理さん、さっきのは気にしないでくれよ」と、肩をポンと叩いて革靴を履いた。
マンションのエントランスで、タクシーに乗り込んだ二人を見えなくなるまで見送った。
走りだしたタクシーを眺めながら、ポツリと拓也が言った。
「さっきは、悪かったな。お袋も悪気はないんだけどさ、早く孫の顔が見たくて仕方ないからあんなこと言ったんだと思うよ。気にしなくていいからな」
「うん」