愛のカタチ
最終章 愛のカタチ
「おーい、早くしろよ!時間ないぞ!」
「わかってるよ、そのくらい!
でも、ファスナーがきつくて…」
結婚記念日を来週に控えた週末の土曜日。
今日は、母方の祖父の十三回忌だ。
新品のストッキングが伝線したり、着慣れない喪服に手間取り、朝からてんやわんやだ。
自分の方が遅く起きたくせに、さっさと支度を済ませた拓也は、玄関先であの調子だ。
「女性はあれこれ大変なんだからね」と、愚痴を言ってみたものの、確かに、時間がない。
慌てて、玄関の鍵を閉め、拓也の運転する車に乗り込んだ。