愛のカタチ


卒業してから一度も訪れることのなかった母校。


300メートルに渡って両サイドに聳える銀杏並木。 


その真ん中に立ったまま、私はピクリとも動けなかった。 


「真理、何してんの?早くおいでよ!先、行っちゃうよー!」


「う、うん。今、行く……」


と、言い掛けたところで、後ろから声がする。 


「いいよ、急がなくて!ゆっくり行こうぜ!」


「えっ?」


くるりと振り返ると同時に、カチッとライターの音がして、一瞬だけ暗闇に明かりが灯された。 



――…賢司?




< 98 / 304 >

この作品をシェア

pagetop