君と僕の夏
・・・・最悪。
頭の中に、母の顔が浮かぶ。
風にゆれた木の葉の音が、今にもさっきの母の怒鳴り声に聞こえてきそうなくらいだ。
「考えるだけで反吐出るわっ!」
ナオは近くにあった金網のゴミ箱をガンっと蹴り飛ばすと、大股で近くのコンビニへと急いだ。
まだ六月だというのに、外は快晴、猛暑で焼け死にそうなくらいだった。
照り付ける太陽が忌々しい。
ナオはこのごろ母親と些細なことで喧嘩するようになっていた。
中学生という荷物と部活動、先輩からの圧力、そして当の母親からの成績のいざこざがストレスというモンスターを生み出していた。
ただでさえ、勉強勉強と迫る母親を避けて自室に閉じこもるようになったナオ。
そんな娘を放って置くわけにもいかず、母の美佐子はああやって声をかけるようにしていた。
だが、それが更にナオのストレスと変化する。
美佐子の声は、ナオにとって耳の奥に溜まる、所謂癇に障る声なのだということに、美佐子自身は気づくはずもなかった。