君と僕の夏
「いらっしゃいませー」
店内に入ると共に、すっかり熱くなった皮膚を涼しい冷風が冷やしていく。
冷房が効いた店内で、ナオは首筋に浮き出た微汗を手の甲で拭った。
パタパタと来ていたTシャツで扇ぐ。
ぼーっとそこで突っ立っていること数秒後、はっとしたように我に返ったナオは、雑誌が置いてあるところへと向かった。
「みなみぃー。最近、彼氏とはどうなん?上手くいっててん?」
「あー、まあまあだと思う。でもなあ、アイツ迫って来おへんの。」
「そっかあー。」
ズラリと並べられた雑誌の中から、ファッション雑誌を手に取ると、ナオは二人の女の子の話に耳を傾けた。
どうやら彼女達がしている話は“恋話”のようだった。
・・・・恋、か。
ナオは彼女達が盛り上がっている話を小耳に挟みながら、呟くように思った。
ナオにとって恋愛など、最近は全然縁のないものだった。
彼氏は勿論、好きな人もいない。
恋をしたくても、気になる人さえいないナオには、どうすることもできなかった。