今日は運転手で
ドアが大きく開けられる。

落ち着いた、趣味のいい、内装。

あたしは、ドアを押さえてくれている、彼の傍らをすり抜ける。

パタンとドアが閉まる音が後ろからする。

「ねえ、周防(スオウ)さん」

振り返る。

部屋へ戻ろうとしていた彼、周防とぶつかりそうになる。

あたしはドキッとして、

周防のほうは、あたしの両肩をとっさに押さえて、ぶつかるのを避ける。

それから、きっちりあたしを回避しながら

「何?さんづけで。気持ち悪い」

ニンマリ笑いながら言って、そのまま部屋に戻っていく。

「…何でいっつも、休日はホテル暮らしなの?あたし、毎回、いろいろ周防さんのこと探し回らないといけないんだけど」

「探し回るは、オーバーだな。どこのホテルの何号室に泊まっているかちゃんと言ってあるのに」

「そうだけど」

「それに、これは、オレの唯一の趣味なの。休みの日くらい、日常と違うところにいたい」

周防は、自分が寝ていたベッドを整えている。

軽く、元通りにして、カバーをかけて

「好きなところに座ってて」

と、浴室に消える。
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