幼なじみが、先生で。
「……はぁっ……つ、捕まえた………」
なんとか芹澤くんの元まで辿り着くことができ、とっさに袖を掴んでしまった。
雨で濡れたワイシャツの感触。
少し触れただけで水滴が溢れた。
持っていた傘をすぐに芹澤くん側に傾けて、これ以上濡れないようグイッと腕を引っ張った。
「……っ………なんだよ」
ようやく反応はしてくれたけど、こっちを向こうとはしない。
背中越しからでも感じる切なさに酷く胸が痛む。
ズキンと心臓が激しい雨にうたれたみたい。
「濡れちゃうと思って……」
「いいんだよ、濡れたって」
雨音混じりで芹澤くんの声がよく聞こえない。
どんな声色なのかさえ、悟らせてはくれないんだ。
「一緒に帰っても、いいかな」
わからないならわかるまで一緒に居ればいい。
どうしても、芹澤くんの側から離れたくないの。
今1人にしたらもう2度と芹澤くんと話せなくなる、そんな気がした。
「………勝手にしろ」
「う、うん。ありがとう……!」
返事は素っ気なかったけど、側に居てもいいってことなのかな。