幼なじみが、先生で。
無理矢理芹澤くんの体を引き寄せて、狭い傘の下に2人で並んで歩く。
こんなに近いと少し緊張する。
時折触れる肩とか、腕とか、そんなところから激しく波を打つ心拍が伝わっていそうだ。
ちらりと芹澤くんの方を何度か見ても、髪の毛で隠れて表情はよくわからない。
乾ききっていない濡れた髪の毛からポタポタと落ちる雫。
泣いているんじゃないかと勘違いしそうだ。
今すぐ何かできるわけじゃない。
でも、それでも、わたしには言わなきゃいけないことがある。
ぎゅっと持ち手を握り締めて、震えそうになる言葉を必死に押し殺して、
「ごめんね」
一言、雨音に紛れてそう言った。
「え?」
どうしても謝りたかったの。
神崎先生と芹澤くんの関係を壊してしまった後悔。
やめた方がいい関係だったとしても、他人の恋愛事情に首を突っ込むなんて反則だった。