幼なじみが、先生で。


無理矢理芹澤くんの体を引き寄せて、狭い傘の下に2人で並んで歩く。

こんなに近いと少し緊張する。


時折触れる肩とか、腕とか、そんなところから激しく波を打つ心拍が伝わっていそうだ。


ちらりと芹澤くんの方を何度か見ても、髪の毛で隠れて表情はよくわからない。


乾ききっていない濡れた髪の毛からポタポタと落ちる雫。

泣いているんじゃないかと勘違いしそうだ。


今すぐ何かできるわけじゃない。

でも、それでも、わたしには言わなきゃいけないことがある。


ぎゅっと持ち手を握り締めて、震えそうになる言葉を必死に押し殺して、


「ごめんね」


一言、雨音に紛れてそう言った。


「え?」


どうしても謝りたかったの。


神崎先生と芹澤くんの関係を壊してしまった後悔。


やめた方がいい関係だったとしても、他人の恋愛事情に首を突っ込むなんて反則だった。


< 102 / 204 >

この作品をシェア

pagetop