幼なじみが、先生で。


「あーあ、早く新しい恋がしてぇなぁ」


髪を掻き上げながらそう呟く芹澤くん。

こんなに近くにいると、全部わかるんだよ?


「美人で胸でかくてスタイル抜群で、超セクシーな人が理想だな!ははっ」


無理に笑わなくてもいい。

辛いときは「辛い」って言ってほしいの。


わたしのせいだとか、何度悲観しても芹澤くんの傷は癒えたりしたい。


そらなら、今わたしにできることをしようと思う。



「なぁ、海里はどう思う?」


哀しいとき、辛いとき、苦しいとき。

力になりたい。


歩く速度を抑えて、ピタリとその場で足を止めた。


「ん?どうした?」

不思議そうに顔を覗き込む芹澤くんと視線がズレないようにしっかりと見据えて、


「泣いても、叫んでも、今ならわからないよ。全部雨のせいだから」


流れる涙は空から降る雨。

言葉は届かず雨音に消える。


わたしは魔法使いでもなんでもないから、哀しみを消すなんてできないけど……。


心を軽くすることならできるかもしれない。


少しでも芹澤くんが前を向いてくれるように。


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