幼なじみが、先生で。
1秒でも早く
知らないこと
頻繁に聞こえていた雨の音も、蝉の声も、気づいた頃には聞こえなくなってきていた。
梅雨が明け、夏が過ぎ、秋の落ち着いた匂いが漂う。
赤く染まった葉が思わず見とれてしまうほど美しい。
ヒラヒラと降る落ち葉。
踏むたびにカサッ、カサッ、と鳴る乾いた音が好き。
「んー、秋だなぁ」
ぽきっと口元でいい音が鳴った。
秋限定のこのお菓子は、1年中置いてほしいくらいに美味しい。
秋限定のお菓子が店頭にたくさん増えてきたら、それは私にとって秋を感じるもののひとつ。
ぼんやりと窓の外を眺めながら大好きなお菓子を頬張る。
なんて優雅な時間だろう。
こんな時には紅茶がほしくなる。
「ちょっと海里!お菓子ばっか食べてないで手伝ってよ〜!」
「わっ!」
腕が目の前に伸びてきたと思ったら、持っていたお菓子の箱が突然消えてしまった。
結衣の手の中にある食べかけのお菓子の箱を名残惜しそうに見つめ、
「まだ全部食べてないのに……」
ボソッと切なく呟いた。