幼なじみが、先生で。
蒼ちゃんからの返事はない。
今、何を考えているのかな。
わたしの言葉を聞いて……どう思ったかな……。
そんなことを聞けるはずもなく、今度は静かに微笑んだ。
「………それでは…失礼しました」
ペコリと頭を下げ、ゆっくりとその場から離れる。
「あっ………」
蒼ちゃんは結局最後までなんの返事もなかった。
いや、最後の言葉を聞かずにわたしが勝手に逃げたのかもしれない。
蒼ちゃんが何か言いたげな顔をしていたのは気づいていたもの。
どうしても答えを聞くのが怖くて先にわたしが切り離しただけだ。
もしかしてたら気付かれたかもしれない。
蒼ちゃんは昔からなんでも察しがよかったからなぁ………。
こんな危ないことをして、本当にバカなのはわたしの方。
「………すき…」
ぽつりと呟いてみた。
誰も居ない廊下で言ったところでただ吹き抜けるように消えていくだけの言葉。
それでもこの2文字を言うだけで、蒼ちゃんの人生が左右される。
なんて重い言葉なんだろう。
蒼ちゃんが私に伝えようとした言葉がなんだったのか、それを知るのはもう少し先のこと。
文化祭まで、あと少し。