幼なじみが、先生で。
「じゃあ桐生先生、俺たちはこれで」
「あ、あぁ……」
俺に見せつけるように、海里を抱き寄せながら長い廊下へと消えていく2人。
その後ろ姿をただボー然と見つめることしかできなかった。
本当は引き止めたかった。
「行くな」って言いたかった。
男友達がいたって、彼氏ができたって、俺が文句を言う権利は無いんだ。
俺と海里はただの幼なじみ。
ただそれだけだから。
“兄”である俺は“妹”を見守るのが役目。
仕事に戻らないと。
仕事にーーーー。
ダメだ。
行かせたくない。
芹澤と2人きりになんかさせたくない。
考えより先に体が勝手に動く。
気づいたら、2人を追いかけていた。
海里が俺の側から離れてしまうのが嫌だったんだ。