幼なじみが、先生で。


「もうすぐ卒業だなんて寂しいなぁ」


「ん?」


「あっ」



さっきまで卒業のことばかり考えていたせいで、つい口が勝手に動いてしまった。


進学が決まって喜んでくれたのに、卒業が嫌だなんて子どもだって思う?



「卒業は終わりじゃない。始まりだよ」


「え?」



静かに語り出すように、再び蒼ちゃんの口がゆっくりとひらいた。


「別れはとても哀しいけど、新しい出会いも待ってる。それに永遠の別れってわけでもない」


「新しい………出会い……」



別れを重ねて、また新しい出会いをする。

さよならするのは寂しいけど、いつだって別れた人にはまた会えるんだ。


振り向かないで、前を向いてわたしは歩いて行かないといけない。

これからの未来で生きるために。


ずっと心に沈んでいた気持ちが、一瞬にして雪のように溶けてしまったみたい。

心が軽くなって、見える景色も変わってくる。


「うん、そうだよね……!」


あんなに不安で、あんなに哀しくて寂しかったのに少し、わくわくしてきた。


新しい出会いのための小さな別れ。

小さな別れを繰り返して、わたしたちは大人になっていく。


それに卒業したら蒼ちゃんに告白だってできるんだ。

落ち込んでる場合じゃない。


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