幼なじみが、先生で。
頭の中を蒼ちゃんでいっぱいにして駆けているば当然のようにしっかり前なんて見れていなくて、
「きゃっ!」
「わっ!!」
勢いよく誰かにぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい………」
地面に床に叩きつけられた体が少し痛む。
ううっ……自業自得。
「あら、海里ちゃんじゃない」
「か、神崎先生!」
なんとぶつかってしまったのはあの神崎先生だった。
なんていうか………会いたくない先生だったような……。
「こんなところで何してるの?」
「あ、いや………」
校舎に辿り着く前にぶつかってしまったものだから、周りには誰も居ない。
あるとすれば、予想より早く咲いた桜の木があるくらいだ。
結局のところ神崎先生はわたしと蒼ちゃんが幼なじみだって知られているのか微妙だし、何か最後に攻撃をくらいそうで怖いなぁ……。
うう……どうしよう。
ふと、目線を下に落とすと、神崎先生の指にキラリと光る何かが見えた。
もしかして、これ……。
「神崎先生……指輪なんて付けてましたっけ?」
「あぁ、これのこと?」
左手の薬指にキラリと光る指輪。
指輪を見つめる神崎先生の瞳は幸せに満ちていて、思わず見惚れてしまった。