幼なじみが、先生で。


「大切な人から貰ったの」


「大切な……人………」


それって神崎先生の恋人で遥の先輩でもある………?


「婚約指輪ってとこかしら」


あんなに離れ離れで不安そうにしていたのに、今ではそんな面影が全く見当たらない。

むしろ堂々としていて以前よりずっと素敵な人に見える。

神崎先生は元から美人だったけど、更に磨きが掛かった感じだ。


「………お、おめでとうございます!!!!」

「きゃあ!」


気がついたら立ち上がって、神崎先生の手を握っていた。

神崎先生も幸せをちゃんと掴んだんだ。

先生とはいろいろ合ったし、正直嫌いだったけど、幸せになってたことは心から喜べる。


「海里ちゃんも幸せ掴めるといいね」

「わ、わたし?」


「桐生先生なら用事があるってさっさと家に帰っちゃったわよ」


パチンっと大人っぽくウインクをする神崎先生。

思わずドキッとしてしまった。


「こんなところであたしの手なんか握ってる暇ないんじゃない?」


「もしかして神崎先生………気づいて……」



「ほらっ、早く行きなさいよ」

「わっ……」


わたしの背中をポンッと押し「頑張ってね〜」と笑顔で去って行った。

神崎先生…………。



「はい、頑張ります!!」


神崎先生に届くように大きな声で叫び、再び走り出した。


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