幼なじみが、先生で。


「……あっ」


今、1番会いたくない人の姿を見つけてしまった。


もうすぐ通り過ぎようとした多目的室からタイミングよく蒼ちゃんが出てきた。

どうやら後ろにわたしがいることに気づいてないみたい。


こ、声なんか………掛けるもんか。


本当は今すぐにでも蒼ちゃんを視界になんか入れたくない。


だけど教室に戻るにはこの廊下の先をまだ歩かなくてはいけないのだ。


つまり、蒼ちゃんの後ろを歩く。


もっと早く歩いてよ………。


ゆっくりのんびり歩く蒼ちゃんとある程度の距離を保つは結構難しい。

なんだか変な緊張感を感じる。

ドクン、ドクンと不気味に響く心臓の音とか、無駄に力の入る歩き方。

振り向きませんようにと唱えるように歩いている。


……………スーツ姿の蒼ちゃんってなんだか新鮮だ。


どんなに中身が変わってしまっていても見た目は昔と変わらない、かっこいい蒼ちゃんのまま。

それがなんだかずるい。



ー…カツンッ


無駄な事を考えていたら、何やら物音がわたし耳まで届いた。


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