幼なじみが、先生で。


「…………蒼ちゃんなんて幼なじみでもなんでもない!!もう嫌いだよ!」


ぐいっと蒼ちゃんの体を押しのけて、廊下へと飛び出した。



「海里っ………!」


蒼ちゃんに名前を呼ばれた気がしたけど、きっと気のせいだろう。


ずっと「お前」としか呼ばれてない。

1度だってわたしの名前は呼んでくれなかった。



昨日も今日も、蒼ちゃんに会ったあとは逃げて泣いて…………。


あの頃は蒼ちゃんに会って哀しい想いをするなんて想像もしていなかった。

蒼ちゃんに会うのはいつも楽しみで仕方なくて、勝手に笑顔になるくらいだったもの。

もう隣で笑うことすらできないかもしれない。



今、廊下に誰も居なくてよかった。

泣きながら走ってるわたしを見たらきっと変に思うだろう。


教室に戻るまでに涙は止まってるかな。

ぐっと目に力を込めながら少しずつ走る速度を落とした。



蒼ちゃんなんて、嫌い………。


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