幼なじみが、先生で。


なんだか緊張して扉を開けられない。

ドクン、ドクンと全身に響き渡る心臓の音を聞いているだけだ。


なんでよりによって視聴覚室なんかに行くんだろう。

他の教室みたいにドアにガラスが付いてれば、中が見れて芹澤くんが居るかどうか確認できるのに。

聴覚室で授業をやることはほとんどない。

もう放課後だしサボりって可能性は低いし…………。

疑問ばかり浮かべても、こんなところで立ち止まっていても仕方が無い。

わたしが動かなくても時間は進んでいく。

何も意味はないのだ。


わたしに与えられたミッションは簡単なもの。

芹澤遥に生徒手帳を届けるだけ。


「ーーーよしっ」


気持ちも固まったところで視聴覚室の重い扉をゆっくりと開くと、



…………え?

そこには全く予想もつかない光景が待ち受けていた。


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