幼なじみが、先生で。


「あ、あの………さようならー!!!!」


振り絞ってでた言葉はそれだった。

昨日と同じくらいの声量で、昨日と同じくらいの速度で、その場からダーッと逃げるように走った。


「え?海里!?待ってよー」


「おい、海里」


結衣の声も芹澤くんの声も聞こえないように耳を強く塞ぐ。

もう、一体なんなのよ〜〜〜!!


叫びたくなる気持ちを抑えて、教室までの道を止まらずに走り続けた。





はぁはぁ……芹澤くん…………なんでわたしの名前知ってるんだろ……。


声を掛けてきたことよりも謎だ。

昨日初めて会ったのに………。


「ふぅ………」


教室に着いてもなかなか落ち着かない。

自分の席で顔を上げたり伏せたりを繰り返してばかりだ。

こんな変な行動をするわたしの姿はクラスメイトにどう思われてるだろう。


だけど落ち着いてなんかいられなかった。


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