幼なじみが、先生で。
「昨日のこと誰にも言わないでくれねぇか?」
「え?」
なにか変なことでもされるかと思ったが、芹澤くんの口から出たのは案外普通の言葉だった。
な、なんだそんなことか………。
「別に誰にも言うつもりないよ?」
いったいわたしが誰に言うと思ったんだろう。
誰か他の先生とか、友達かな?
「そうか、ならよかった ……」
わたし答えを聞き、ほっと胸を撫で下ろす芹澤くん。
なんだか話しやすそうな空気だったせいか、
「神崎先生って生徒にまで手を出してたんだね………なんていうか………すごいね……」
勝手にそんな言葉が口から零れていた。
「有紗は誰かそばに居てくれる人がいないとダメなんだよ」
優しい瞳に優しい声。
この一瞬ですぐに察してしまった。
芹澤くんはたぶん神崎先生が好きなんだ。
目の前に居るのはわたしなのに、目が合うどころか遠くを見据えている。
「芹澤くんって神崎先生のことが好きなの?」