幼なじみが、先生で。
「俺が有紗を好きだから、先輩のことを大切に想う有紗の気持ちもよくわかったんだ」
「ま、待ってよ。遥だってわかってるでしょ?あたしは誰かが側にいてくれないとっ…………」
「大丈夫だ」
ようやく顔をあげた芹澤くんの表情は、とても澄んでいて思わず見惚れてしまう。
真っ直ぐと神崎先生を見据えて、優しく微笑んだ。
「有紗は1人でも先輩を待ってられる。ずっと側に居た俺が言うんだから信じろよ?先輩の次くらいに有紗のことよく知ってんだから」
わたしにも、いつかこんな日が来るのだろうか。
「でもあたしは………」
「先輩と幸せになってよ」
好きの気持ちを押し殺して、蒼ちゃんの幸せを願えるのだろうか。
わたし以外の誰かの隣で笑う蒼ちゃんに笑って言える?
「じゃあな“神崎先生”……」
『おめでとう、桐生先生』なんて。
「やだっ……行かないでよ遥っ……!!」
神崎先生の最後の声にも芹澤くんは笑っていた。
ただ笑って、神崎先生を見ていた。