幼なじみが、先生で。





さっき窓越しに聞いた時よりも、はっきりと雨音が聞こえてくる。


パタパタを足を早めて下駄箱に着いたはいいが、雨のことをすっかり忘れていた。


資料室で聞いた時より激しく地面を打ち付ける雨。

どうしてこんな日に限って雨なんか降ってるんだろう。


ぼんやりと眺め続けているわけにもいかず、鞄から折り畳み傘を引っ張り出し、


「よしっ……」


ポンッと広げて外へ行こうと思った、時だった。


ふと芹澤くんの顔が頭に浮かぶ。

芹澤くん……傘、持ってるのかな……。


ううん、それよりも、

こんな激しい雨の中で1人にしてもいいの?

わたしなら寂しいもの。


雨の匂いに雨の音。

雨は別に嫌いじゃない。


でも、雨の日ってちょっと切なくなるもの。

それはきっとわたしだけじゃないと思う。


会わないで帰った方がいいに決まってる。

それが正しいのはわかってるのに、

ーーー足が動かない。


動けずに立ち止まっていると、背後からパタパタと足音が近づいてきた。


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