幼なじみが、先生で。
こんな誰も居ない下駄箱でただ傘を持っているだけ。
こんな奇妙な姿をみたらきっと芹澤くんも気付くよね?
わたしが人の会話を聞いてたんだって。
だから、動かないでいるんだって。
『盗み聞きするなんて最低だな』
そう言われたって仕方ない。
故意にやったわけじゃなくても、聞いたことは事実だ。
動かないことを理由に盗み聞きをしてしまったことに変わりはないもの。
そうやって自分の後悔を塗り重ねていると、
「海里?」
ついに芹澤くんに見つかってしまった。
「っ………!」
やはり聞こえた足音の持ち主は芹澤くんだった。
なんて言う?
なんて言えばいいの?
ただ背を向けて、ぐっと唇を噛んで、芹澤くんの顔を見るのが怖いだなんて。
「あの………わたし………」
上手く声が出ない。
言い訳も、慰めも、何もない。
頭は真っ白だ。
「ーーーーなんだ、聞いてたのか」