好きってきっと、こういうこと。
「お前って、本当に何しでかすか分からねぇ」
「それはごめん」
「だけど……そんなところから、目が離せないんだけど、な」
「え?なんか言った?」
「何でもねぇよ、チビ」
さっきまで泣いてた人にデコピンをし始める渡辺は、やっといつもの表情に戻ってくれた。途中、何言ってるのか分かんなかったけど。
でもこれが、あたしには心地いいなあ。この距離感がちょうどいい。
目を閉じてアルコールが染みわたっているのを感じていると、「内海」と隣から名前を呼ばれた。チラッと横を見ると、そこには真剣な顔をした渡辺がいた。
「正直言うとさ、お前が新人の教育係を頼まれてた時、すっげー不安だったんだよ。同期なのになんだか頼りないお前が他の仕事出来るのか?って」
「な、失礼な」
「でもお前だって不安感じてただろ?出来ることならお前には営業だけに集中してほしかった。やっとまともにクライアントと対等に相手できるようになったのに、その調子が崩れてしまったらお前が可愛そうだと思って。
だけど塚田課長に言われただろ。可能性を広げることも大切だって。俺にはそんな視点なんてまったくなくてさ、すっげー悔しかった。俺はまだまだなんだって思い知らされたみたいで。
だからちょっと機嫌悪く接してしまってた。ごめん」
「え」
「正直に言っただろ、今。お前泣き出すし、正直に話したんだよ」
そうやってそっぽ向く渡辺が少し可愛く思えてくる。なんだか今日のあたし、おかしいみたい。
こうやって3年目を迎える今でも、渡辺のことをもっと知りたい、と思えてくるなんて。