好きってきっと、こういうこと。
3*同期の殻を破りかけた日

渡辺と仲良くなったのは、第一営業担当に配属されてからだった。

同期ということで席も隣同士、最初の営業研修や入社1年目に課される課題も全て同じで、常に渡辺と競ってきた毎日だった。


仕事の出来る渡辺と、まったく出来ないあたしとの差はすぐに開いてしまうのだけれど。


それでも、あたしと渡辺はまあまあ上手くやって来たつもりだった……のに。

まさかこんな日が来るなんて、思ってもいなかった。


「……ん?」


徐々に鮮明になっていく視界に、はっきりと覚醒してくる脳。目の前に見えるのは、あたしが今まで一度も見たことがない天井。

あたしの部屋の天井ってこんな感じだったっけ?と今までの記憶を振り返るけど、やっぱり瞳に映っているのはあたしが知っている天井じゃない。


……だったら、ここはどこなの?


一気に今置かれている状況を理解したあたしは慌てて起き上がろうとするけど、何か胸の下の辺りに違和感を感じて起きられない。

目線を少し下にずらすと、そこには誰かの腕が乗っかっている。

その腕は見かけによらず凄い力であたしを抑え込んでいて、あたしはまったく身動きが出来ない。だけどとりあえず起きて今の状況を確認してみないと、何が起こっているか理解できない。


なんとか腕をずらそうと、右を向いてみると。


「ええっ……!?な、なんで!!」


え、ちょっと待って。

なんで同期である渡辺が、隣であたしのことを抱きしめて気持ちよさそうに寝てるの?

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