好きってきっと、こういうこと。

「内海さん、今日はどうだった?」


午後からの外回りを終えオフィスに戻ってきた途端に、あたしは自分の直属の上司である塚田課長に微笑まれながら問われた。

塚田課長は30代半ばの独身。短いに黒髪フレーム眼鏡をかけニコリと笑った姿は、少しドキッとしてしまうほどにかっこいい。


そんな塚田課長に、今日の成果を報告する。


「今日は大きなミスもなく無事に終えることが出来ました。クライアントの反応も上々です」

「そうか。まあ渡辺も一緒だったからな。早く独り立ちできるように、明日からも頑張れよ」

「はい、ありがとうございます!」


そう返事したあと、あたしは自分のデスクへと向かう。

その隣のデスクでは、あたしと一緒に帰社したはずの渡辺がすでに自分のデスクで仕事をしていた。


やっぱり、渡辺は出来る人なんだなという現実に直面し、少し胸が痛む。


あたしだって精一杯やっているのにいつもミスばかり。そして心配された課長に同期と一緒に同行しろと言われるほどの出来なさっぷり。

だけど、あたしと違って渡辺は営業以外にも様々なプロジェクトを抱えている。他部門との業務もいくつか抱えているって聞いたことがある。


今日、また後輩も増えたって言うのに、本当にこのままでいいの?

沈んだ気持ちを抱えて自分のデスクに戻ると、右隣にいる渡辺があたしのほうをチラッと見た。

< 3 / 20 >

この作品をシェア

pagetop