好きってきっと、こういうこと。
「お疲れ、内海」
「お疲れ様。今日は本当にありがとう。渡辺も忙しいのにあたしになんかに同行してくれて」
「なんだよ、急にかしこまってさ。いつものことじゃん」
「だけどさ……」
珍しくあたしが落ち込んでいることを渡辺は気付いているのかいないのか、右隣から飴玉がデスクに置かれた。
チラッと横を見ると、視線はパソコンに向かっているものの、何かを話したそうにしている渡辺がいる。
「明日金曜日だろ。飲みにいくか」
「え?」
「お前、ワイン好きだったよな?おいしいワインバーがあるって聞いたんだよ。だけど女性向きの店らしくて、俺一人じゃ入りにくいから。だから行くぞ」
「う、うん」
「明日俺は別のクライアントとの約束があるからお前の同行には着いていけない。だからミスしないように仕事頑張れよ」
もしかして渡辺、あたしを励まそうとして飲みに誘ってくれてる?
「明日から新入社員が配属されてくるらしいから、抜かされないように気合い入れろよ」
「うん!」
やっぱり渡辺は、少しは優しいヤツなのかもしれない。