好きってきっと、こういうこと。
そして迎えた翌朝。
朝の挨拶をしつつ自分のデスクに着くと、なにやらオフィス内がざわついていることに気付いた。
あたしより早く出勤してデスクでブラックコーヒーを飲んでいる渡辺に、コソコソを話しかける。
「渡辺おはよう。みんなどうしたの?」
「あれだろ、今日から新入社員が来るからみんな浮かれてるんじゃねぇの?」
「あ、そういえば昨日来るって言ってたね。どんな子が来るのかな?」
「お前、人のことより自分のこと心配しろよ。今日は俺もフォロー出来ないんだからな」
「はい。ごめんなさい……」
同期に叱られるなんて、やっぱりあたしは周りが見えてない。
しゅんとしながらも、今日外回りする相手の確認と資料をカバンの中に詰め込んでいく。今日は特定のクライアントとの約束もないから、新規で契約を取ってくることになっている。
気合いを入れたところで、始業を知らせるチャイムがなる。
普段はこのチャイムを聞いたら簡単な朝礼を行ったあとに各自業務を始めるけど、今日は朝礼をする気配がない。
普段と違う雰囲気に戸惑っていると、課長と見たことがない男性社員がオフィスに入って来た。
シワがなくピシッと決まっているスーツに、緊張を隠せない面持ちですぐに分かった。
あの子、新入社員の子だ。