好きってきっと、こういうこと。

すると、横で話を聞いていた渡辺が助け舟を出してくれる。


「塚田課長、僕は別に内海の仕事くらいカバーできますが、コイツに何をさせるつもりなんですか?」

「まあまあ、そんなに怖い顔しないでよ渡辺くん。ただ俺は、内海さんに営業以外にやってほしい仕事があってね。それをお願いしにきたんだ」

「やってほしい仕事……ですか?」


あたしが首を傾げると、塚田課長は優しい笑みを浮かべて口を開いた。


「ああ。内海さんには相村くんの教育係をお願いしたくて」

「きょういく、がかり……?って、ムリ!無理ですよ課長!!」


聞きなれない言葉に拒否反応を示してしまうあたしを、塚田課長は面白そうに見ている。でも視線の先にいるのはあたしではなく、なぜか渡辺だ。

塚田課長はあたしではなく、渡辺に向かって話し始めた。


「確かに内海さんはまだ営業にひとりで行かせるのに不安だらけだけど、そんな彼女の可能性を広げてあげることも大切なんじゃないかな、渡辺くん」


渡辺はデスクのほうを向いて珍しく黙り込んでいる。いつもなら何か反応を返すのに、今の渡辺は何かがおかしい。


「大丈夫。内海さんは出来る人なんだから自信もって。いつまでも渡辺くんの付き添いなんかじゃ成長できるものも出来ないよ?」

「俺、クライアントとの打ち合わせがあるので行ってきます。内海、今日の新規契約の資料があったら俺にくれ」

「う、うん……」


いつもの渡辺らしくないな、と思いながらクリアファイルにまとめていた資料を手渡すと、中身を確認した渡辺はあたしや塚田課長に目を合わせることもなく、そそくさとオフィスを去っていった。

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