君を好きな理由
「華子さん可愛い~!」


彩菜ちゃんが目を輝かせて言うと、


「可愛くないです!」


華子は狼狽えて磯村さんの影に隠れる。


……安定の華子クオリティ。


これが華子よね。


皆の視線を集めるなか、盾になった磯村さんが苦笑いしながら両手をあげた。

「あー……勘弁してやって?」


山本さんが吹き出して、それから彩菜ちゃんが微笑む。

「そろそろ披露宴用に着替えて来ないといけないので、その前に写真撮りましょうよ、写真」

彩菜ちゃんが言うと、華子がちらっと顔を出した。

「……無理です」

「華子さんは磯村さんにくっついてればいいんです。この面子でしたら大丈夫でしょう?」

「…………」

微かに驚いたような顔をして、それから磯村さんと視線を合わせた。

「俺は何も言ってねぇよ」

「……そう?」

何かしらの攻防の末、とりあえず磯村さんに抱きつかれたような形で撮ることになり、華子もしぶしぶ写真撮影を承諾した。


「カメラ誰が撮んの?」

「あ。俺の知り合い」

山本さんが片手を上げて手を振ると、爽やかなライトグリーンのドレスワンピースの女の人が近づいてきた。


「山さん人使い粗い!」

「最後最後。これ、俺の友達だから」

「そうなんだ? じゃ、完璧に撮ってあげるね~」

そう言って取り出したのはゴツい一眼レフのカメラで、目を丸くした。

ライトグリーンのドレスワンピースに全くそぐわない、その頑固そうに見える黒いレトロなカメラ。


「……友達の結婚式に、やたらにプロ仕様のカメラだな」

「プロだもん」

磯村さんの呟きに、山本さんがあっさり答えてぎょっとした。

「プロ?」

「マジか」

「宇津木雪と言います。皆さんの驚いた顔もなかなか楽しい思い出ですけど、どうせなら笑顔くださーい」

確かに。

山本さんと彩菜ちゃんはニコニコしているし、博哉はそもそも面白いものを見つけたみたいに楽しそうにしているし……

「ブルーのドレスのお姉様。ちょっと緊張してますか~? なら、そこの彼氏さん笑わせてください」

「難しい注文だな」

それが華子クオリティ……仕方ないなぁ。

「華子。掃除してると幸せよね?」

「いいわね」

うっとり微笑んだ所で、シャッター音が聞こえた。
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