君を好きな理由
まぁ、こんな風に出来るのも付き合っている特権よ。
正直言うと馬鹿ップルになるわよね。

馬鹿ップルって、もう死語かしら。
オヤジギャクの類いかもしれないな。

それもいいじゃない?
いいと思うようになったわよ。

そんな事を思いながらもパーティは進み、ガーデンパーティ用にマキシ丈の白いドレス姿を披露しながら、彩菜ちゃんが山本さんにエスコートされてくる。


どうしたことか、さっきより何故か照れている彼女を眺めて首を傾げた。


きっと何かあったのね。

そんな邪推もして、博哉の腕に腕を絡ませる。


「……どうかしましたか?」

「別に?」

「結婚式を挙げたくなりましたか?」

「そうねぇ。この幸せオーラは良いわよね」

「今からですと、急げば秋口に間に合うと思いますが」

「…………」

無言で腕をつねると、冷静にその指を外された。

「では、来年のこの時期にしますか」

「そうじゃなくて。そもそも、そんなついでみたいなプロポーズは受け付けないって言ってあるでしょう」

「解ってますよ。言うだけなら害はないでしょう」

いろいろと、心臓には悪い気がしますけどね。

とりあえず会場にシャンパングラスが配られて、山本さんの上司の乾杯の音頭にグラスを合わせる。


そうねぇ。

どこかのホールで挙げる披露宴とは違って、ガーデンパーティは何かアットホームな気もするけれど、これはこれで幸せそう。

たまに走り回る誰かのお子さんにぶつかられそうになって、慌てて避けたり。
子供たちに囲まれて、戦々恐々としている華子だったり。
腕を組んでいる私たちを見て、ぎょっとしている社員たちだったり。


……これもこれで面白い。


「あれかしらね。社長に伝えなくては……! って、思っている社員もいるのかしらね」

「何をですか?」

「私たちの事?」

「相談役が知っている段階で知られてますよ。今は傍観してくれてますが、そのうち探りくらいは入るかもしれませんね」

「え。私が探られるの?」

「どうですかねぇ。俺の方が信用ないですからねぇ」

「……家族に信用ないって、どういう事よ」

「俺もたまにサボりますからねぇ。信頼度でいけば、相談役顧問の定期検診任されている段階で、はるかの方が上でしょう」

「家族の信用って、そういうので図るものじゃないと思うんだけど」

やっぱり、博哉の家族観は解らない。
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