君を好きな理由
そりゃあ、うちの子は絶対に間違わない!とか、無闇に盲信している親もどうかと思うけど、仕事で図るものでもないと思うんだな。

あれなんだろうか?

成人して社会に出るまでは、テストの点数とかで信頼を勝ち取っていた訳なんだろうか……


ふ、不憫すぎる。


「大学入って、すぐ辺りまでは成績が良いだけの馬鹿息子でしたからね。しばらく家に帰らないとか、父名義のカードは使いたい放題だとか」

「あら……」

「一度見失った信用というものは、回復するには時間がかかりますよ」

いっそサバサバした博哉に苦笑した。

「まさに、典型的な坊っちゃんだったわけなの?」

「朝月さんいわく、坊っちゃんにも2種類だそうで。責任をしっかり叩き込まれてそれに向き合う者と、まわりがちやほや持ち上げられて、親の実績を自分の功績かの様に振る舞う者と」

「まぁねぇ。色々といるのは解る」

「俺の場合は次男の気軽さですかね」

博哉はぶつぶつ言いつつ、苦笑しながら眼鏡を直した。

「おかげで他社の面接を受けようとしたら父に説教されまして、半ば強引に就職させられました」

「社長に?」

「他社に迷惑はかけられないと」

あらー……

そういういきさつがあったの。

それでブツブツ言いながらも、うちの会社に居たわけね。


「案外、苦労人ね」

「まぁ、無視してしまえばよかったのでしょうが、他社に行くと挨拶しに行くと脅されまして」

「…………」

他社に就職した息子の会社に、他社の社長が挨拶しに行くとか、どれだけやりにくくなるだろう。

「甘えるつもりは有りませんが、世の中、あんな馬鹿ばかりではないと言うことです」

暗に“誰”の事を言っているか解ってしまうから困るけど。


「それこそ馬鹿なことばかり考えていないで、お祝いしてあげましょう?」

「自分のお祝いもしたいです」

「……お腹が空いたわ」

「何か取ってきましょう」


サッと切り替えた博哉に吹き出した。


こういう所が博哉の良いところだよね。

たまに食い下がるけど。
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