君を好きな理由
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暑い日差しと青い空。
ポッカリと白い雲が見えるし、風は心地いいくらいで、白いワンピースのスカートと、おろしている髪をふわりと掠めていく。
海の紺碧に、灰色の砂浜。
背後には可愛らしい感じの白い木製のペンションにビーチパラソル。
これぞ夏的なロケーション。
でも漂ってくるのは、イカが焼ける香ばしい匂いと、少し焦げたような醤油の香り。
正直、砂浜の匂いと言うより、夏祭りの屋台の……
「はるかちゃん! イカが焼けたから、温かいうちに食べちゃいなさい」
博哉の苦笑と、ペンションの持ち主であり親戚の君子さんの呆れ顔も無視して、博哉のママはトングをカチャカチャさせる。
……正直びっくりしたわよ。
博哉のペンションに着いて入るなり、鍔の大きな帽子に、ハリウッド女優の様な大きなサングラス、『私をめちゃめちゃにして頂戴』とアルファベットでロゴの入った黄色いTシャツに、デニムのショートパンツ……の女の人に抱きしめられた。
固まっていたら君子さんに爆笑されたけれど、引き剥がされ、改めて「母です」と博哉に紹介されて二度固まった。
だって社長婦人って、きりっとしたイメージがあるじゃない?
海に来るにしても、清楚なイメージと言うか。
気品溢れるとまではいかなくても、せめて普通の格好しているとか思うじゃない?
さすがに小麦色でやたら健康的な、元気印なお母さんが出てくるとは思ってもみなかった。
みなかったのに、博哉ママの亜稀さんは、我関せずで慌ただしい挨拶を交わして私たちをテラスに連れ出して……
テラスからは海が見えた。
同時に、ジュージューいっているバーベキューグリルも見えた。
「お腹空いたでしょう? 結構遠いものね。水着は持ってきた? 後で泳ぎましょう」
矢継ぎ早にそう言って、亜稀さんはイカを丸ごとお皿に乗せてくれた。
博哉がお皿を引き取ってくれる。
「はるか。着替えて来た方がいい。白いワンピースでは汚れます」
「ありがとう」
さすがにこの格好でイカにかぶりつくのは気が引けるしね。
「ああ。じゃ、こっちにおいで、彼女さん」
君子さんについて行き、空いている部屋に連れていってもらった。
「亜稀に面食らってるみたいだけど、悪い人じゃないのよ? 単に我が道を脇目も振らずに突き進むだけで」
それはそれでどうだろう?
何となく、母親似と言われてショックを受ける博哉の気持ちがわかりかけた気もする。
もう少し、博哉の方が大人なのかも知れないけど、でも嫌いじゃないわ。
亜稀さんを見習って、Tシャツにサブリナパンツに着替えてから、小さなポーチを抱えてテラスに戻る。
何故かバーベキューグリルの前に博哉がいた。
「あれ? お母さんは?」
「あちらです……」
置いてあるステーキをひっくり返し、博哉は海を指した。
指した方角を見て、思わず吹き出す。
毛むくじゃらの大型犬と砂浜で転げ回っているお母様。
バイタリティーが凄い。
「……聞くのは失礼かもしれないけれど、おいくつ?」
「今年で57になるはずです」
「……若いわね」
暑い日差しと青い空。
ポッカリと白い雲が見えるし、風は心地いいくらいで、白いワンピースのスカートと、おろしている髪をふわりと掠めていく。
海の紺碧に、灰色の砂浜。
背後には可愛らしい感じの白い木製のペンションにビーチパラソル。
これぞ夏的なロケーション。
でも漂ってくるのは、イカが焼ける香ばしい匂いと、少し焦げたような醤油の香り。
正直、砂浜の匂いと言うより、夏祭りの屋台の……
「はるかちゃん! イカが焼けたから、温かいうちに食べちゃいなさい」
博哉の苦笑と、ペンションの持ち主であり親戚の君子さんの呆れ顔も無視して、博哉のママはトングをカチャカチャさせる。
……正直びっくりしたわよ。
博哉のペンションに着いて入るなり、鍔の大きな帽子に、ハリウッド女優の様な大きなサングラス、『私をめちゃめちゃにして頂戴』とアルファベットでロゴの入った黄色いTシャツに、デニムのショートパンツ……の女の人に抱きしめられた。
固まっていたら君子さんに爆笑されたけれど、引き剥がされ、改めて「母です」と博哉に紹介されて二度固まった。
だって社長婦人って、きりっとしたイメージがあるじゃない?
海に来るにしても、清楚なイメージと言うか。
気品溢れるとまではいかなくても、せめて普通の格好しているとか思うじゃない?
さすがに小麦色でやたら健康的な、元気印なお母さんが出てくるとは思ってもみなかった。
みなかったのに、博哉ママの亜稀さんは、我関せずで慌ただしい挨拶を交わして私たちをテラスに連れ出して……
テラスからは海が見えた。
同時に、ジュージューいっているバーベキューグリルも見えた。
「お腹空いたでしょう? 結構遠いものね。水着は持ってきた? 後で泳ぎましょう」
矢継ぎ早にそう言って、亜稀さんはイカを丸ごとお皿に乗せてくれた。
博哉がお皿を引き取ってくれる。
「はるか。着替えて来た方がいい。白いワンピースでは汚れます」
「ありがとう」
さすがにこの格好でイカにかぶりつくのは気が引けるしね。
「ああ。じゃ、こっちにおいで、彼女さん」
君子さんについて行き、空いている部屋に連れていってもらった。
「亜稀に面食らってるみたいだけど、悪い人じゃないのよ? 単に我が道を脇目も振らずに突き進むだけで」
それはそれでどうだろう?
何となく、母親似と言われてショックを受ける博哉の気持ちがわかりかけた気もする。
もう少し、博哉の方が大人なのかも知れないけど、でも嫌いじゃないわ。
亜稀さんを見習って、Tシャツにサブリナパンツに着替えてから、小さなポーチを抱えてテラスに戻る。
何故かバーベキューグリルの前に博哉がいた。
「あれ? お母さんは?」
「あちらです……」
置いてあるステーキをひっくり返し、博哉は海を指した。
指した方角を見て、思わず吹き出す。
毛むくじゃらの大型犬と砂浜で転げ回っているお母様。
バイタリティーが凄い。
「……聞くのは失礼かもしれないけれど、おいくつ?」
「今年で57になるはずです」
「……若いわね」