君を好きな理由
そうね。興味津々なのよ。

こっちが困るくらいに興味津々で、どうしたものか思案中よ。

この間、博哉の部屋を掃除したら、結婚情報雑誌が出てきてビックリした。
かなり長い間ぼんやりと、どの面下げて購入したんだろう……とか、思わず考えちゃったわよ。

そして、住宅情報紙にまでチェックされているのを見て頭を抱えた。


抱えていたら、ニコニコと無言で首を傾げられたわよ。


「本当、どうして私なんだろう」

小さく呟いた言葉に、博哉が気がつく。

「好きなものは好きとしか言いようがいですが」

「こんな固執される程、いい女でもないけど」

口は悪い……と言うか冷たいだろうし、だいたいの事には大雑把だし、家事は掃除が得意なだけで出来ないし。

女らしいと言えば、容姿くらいなものじゃない?

それだけの女なら、他にいくらでもいるわ。

確かに、立場的に地位や環境で差別はしないけど、博哉が思っているほど見境なく平等と言うわけでもない。

患者は平等、だけど、優しくするのは内輪の人間だけで、そうじゃなければ突き放す。

それほど真剣に追い回す程、優しい女でもないし、優しい人も他にたくさんいる。


「そういう所、はるかは乙女ですよねぇ」

「何がよ」

「好きになった理由を知りたがるのは……女性特有だと思います」

「だって、謎なんだもの」

博哉は自分で作ったお握りに手を伸ばし、食べながら難しい顔をした。


「きっかけは申し上げたでしょう?」

「聞いたけど。あれだって、実は八つ当たりの産物に近いんだけど」

キラキラさせながら“だから好きなんです”とか言ったら、博哉はマゾだと認定しちゃうけど。


「怒られてましたからねー。最初は俺を普通に扱ってくれた希な人だと思って……探しました」

うん。

「探しても見つからないと、もう執念のように思ってましたが」

「執念……」

肩をすくめてにっこりと微笑む。

「まぁ、俺もその時まで、はるかの外面しか見てませんでしたから」

接点はほぼなかったからね。

「そうして初めて同席した飲み会の時に、歯に衣は被せないですし、態度は大きいですし、それでいて色々と我慢もしているんだと知りました」

それは、華子の誕生日を宅飲みでお祝いした時かしらね?

「はあ……」

しかも、あの時は酔っぱらっていたよねぇ?

磯村さんに喧嘩売ったんだ。

それから一気に醒めたけど。

「はるかの事ですから、どうせ貴女は美しいだとか、頭が良いだとか、怒った顔は綺麗だとか、たまに拗ねると可愛いだとかは言われ慣れて……」

博哉は私の顔をまじまじと見てから、ついっと眼鏡を上げる。

「失敬。言われ慣れて無さそうですね?」

真っ赤になっているでしょう。

淡々と答えられても困るんだけどさ。

どうせ、冷たい女だとか、踏みにじる女だとか、親父だとか、キツいだとかしか言われてませんよ。
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