君を好きな理由
「はるかさんは、恋愛は嫌いですか」

唐突に話が戻ったな。

「あら、恋愛は好きよ。これでも女だもの」

ニッコリ微笑むと、ニッコリ返された。

「……すぐに一線引きますよね」

「………………」


引いている……かもね。


今まさに、貴方に引いているよね。

「恋愛しないわけじゃないわよ」

高校の時には2年付き合った彼もいたし、大学時代にも何人か付き合った。

その後は研修だの、医局だの、救急だのと忙しかったけれど、それなりの人もいたし……

「昔は恋愛していたわけですか」

「それなりに。でもこの年齢になると恋愛だけにパワー使ってられないじゃない?」

「……きっと楽しいですよ。俺と恋愛しましょう?」

「馬鹿ねぇ。恋愛なんて楽しいばかりじゃないでしょうが」

「そうですか?」


そうよ、

「楽しいだけの恋愛なんて遊びみたいなものじゃない」

喧嘩だってするでしょうし。
寂しくなったりもするでしょうし。
悲しいときだってあるはずだわ。

相手の事を考えないでいいのなら楽だし、それはそれなりに楽しめるかもしれないけれど……


「そうですか。はるかさんは傷つけられたという事ですか」

嫌に静かな呟きに固まった。

「今のは一般論でしょう」

反論したら、どこか呆れたような視線と目が合う。

「こんな生まれですと、建前と本音くらいは解るもんです。はるかさんは、なかなか上手に本音を隠してくれますが……」

ふっと笑って、眼鏡を直した。

「俺は酔っていても、泥酔はしてませんので。油断しましたか」

とても楽しそうに笑う。


なんだろう、何て言うか……


なんか裏表ありまくりじゃないの。


「うわー……苦手なタイプだ」

「はるかさんが本当に苦手なタイプは俺じゃありませんよ」

「何を根拠に言ってるわけ?」

「いろいろと観察させていただいてますから」

ふっと笑う彼を見ながら、頭を抱えた。


そうか、そうだよね。

うん。目の前で見ていたのに……


「類は友を呼ぶって確かね」

「それもお互い様でしょう」
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