君を好きな理由
いろいろな言い訳です。
*****
「酷いじゃないですか、水瀬さん!」
診察椅子を占領し、ぷりぷり眉をつり上げている観月さん。
何がどう“酷い”のか、お姉さんにも解るように説明して欲しい。
そして、私の仕事を邪魔していることを察して欲しい。
貴女は、気遣いの精神を発揮するところよ?
「葛西さんに興味ないふりをなさって、どうして休日に二人でファーストフード店にいるんですか!」
いろいろ説明はできるけど、さすがにお泊まりして、翌朝ご飯をご馳走になって、服を脱がされそうになったから映画に付き合った。
そんな正直に言うと、いろんな憶測が飛び交うことも予想できた。
だからと言って、嘘をつくのもなぁ。
「いい大人が、ファーストフードでお茶して何が悪いのよ」
「葛西さんと二人でと言うところが問題なんです!」
「貴女も誰か友達とファーストフードくらい行くでしょうが」
「友達なんて行きません!」
「…………」
うん。
なんだか聞いてはいけないものを聞いてしまった気がするな。
友達がいないのか、休日に友達とはファーストフードに立ち寄らないのか、そもそもファーストフードに行かないのか。
華子みたいな友達なら解るけど、友達とファーストフードにも入らないという希望的観測をすると、彼女の口調からはお洒落なカフェにしか入らないと言う……
「私、お友だちなんていませんの。いつも男性と行くお店は高級レストランですし」
「私は近所の居酒屋でいいわー。たまになら高級感漂うレストランでもいいけど、疲れるし」
そうか。友達いないのか、観月さん。
それならあれやこれやの暴走を止めるストッパーも、相談できる同性もいないのか。
ある意味で納得しちゃったわよ。
「どうして水瀬さんなんですか!」
「私に聞くのは大きな間違い」
「水瀬さんは伺ってますでしょう? 教えてくださいマネをします!」
アホか、あんたは。
「……馬鹿ねぇ。聞かないわよ」
呆れて返事を返すと、観月さんはきょとんとした。
「聞かないんですか? なぜ?」
「好きだって言われた男に、私のどこが好きなの? って、自分では答える気もないのに聞くの?」
「聞きませんか?」
「そりゃ、相手に好意をもっていれば聞いてもいいかもね。わざわざ気を持たせるような事、聞くもんですか」
「…………でも、デートしてました」
「事情も理由もあるけど、貴女には関係ないから言う義理はない」
まぁ、そもそも本気で服を剥ごうとしたとも思えないし、ガッツリ怒ったら葛西さんもやめただろう。
だけど、本気で嫌だった訳じゃないのに、本気で抵抗するのも馬鹿らしい。
……友達としての葛西さんは、許容範囲よ。
まぁ。これが言い訳で、建前と言うことは、私も葛西さんも気づいているんだろうけど。
気づいていても見ないフリ。
知っていても知らないフリ。
聞き流す、聞かないフリをする。
いつからこんなんなっちゃったかしらね。
「酷いじゃないですか、水瀬さん!」
診察椅子を占領し、ぷりぷり眉をつり上げている観月さん。
何がどう“酷い”のか、お姉さんにも解るように説明して欲しい。
そして、私の仕事を邪魔していることを察して欲しい。
貴女は、気遣いの精神を発揮するところよ?
「葛西さんに興味ないふりをなさって、どうして休日に二人でファーストフード店にいるんですか!」
いろいろ説明はできるけど、さすがにお泊まりして、翌朝ご飯をご馳走になって、服を脱がされそうになったから映画に付き合った。
そんな正直に言うと、いろんな憶測が飛び交うことも予想できた。
だからと言って、嘘をつくのもなぁ。
「いい大人が、ファーストフードでお茶して何が悪いのよ」
「葛西さんと二人でと言うところが問題なんです!」
「貴女も誰か友達とファーストフードくらい行くでしょうが」
「友達なんて行きません!」
「…………」
うん。
なんだか聞いてはいけないものを聞いてしまった気がするな。
友達がいないのか、休日に友達とはファーストフードに立ち寄らないのか、そもそもファーストフードに行かないのか。
華子みたいな友達なら解るけど、友達とファーストフードにも入らないという希望的観測をすると、彼女の口調からはお洒落なカフェにしか入らないと言う……
「私、お友だちなんていませんの。いつも男性と行くお店は高級レストランですし」
「私は近所の居酒屋でいいわー。たまになら高級感漂うレストランでもいいけど、疲れるし」
そうか。友達いないのか、観月さん。
それならあれやこれやの暴走を止めるストッパーも、相談できる同性もいないのか。
ある意味で納得しちゃったわよ。
「どうして水瀬さんなんですか!」
「私に聞くのは大きな間違い」
「水瀬さんは伺ってますでしょう? 教えてくださいマネをします!」
アホか、あんたは。
「……馬鹿ねぇ。聞かないわよ」
呆れて返事を返すと、観月さんはきょとんとした。
「聞かないんですか? なぜ?」
「好きだって言われた男に、私のどこが好きなの? って、自分では答える気もないのに聞くの?」
「聞きませんか?」
「そりゃ、相手に好意をもっていれば聞いてもいいかもね。わざわざ気を持たせるような事、聞くもんですか」
「…………でも、デートしてました」
「事情も理由もあるけど、貴女には関係ないから言う義理はない」
まぁ、そもそも本気で服を剥ごうとしたとも思えないし、ガッツリ怒ったら葛西さんもやめただろう。
だけど、本気で嫌だった訳じゃないのに、本気で抵抗するのも馬鹿らしい。
……友達としての葛西さんは、許容範囲よ。
まぁ。これが言い訳で、建前と言うことは、私も葛西さんも気づいているんだろうけど。
気づいていても見ないフリ。
知っていても知らないフリ。
聞き流す、聞かないフリをする。
いつからこんなんなっちゃったかしらね。